『硝子回覧板』
2022年11月20日発行。
津中堪太朗・武田ひかの短歌122首を収録。
新書版70ページ。
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津中堪太朗 カーブミラーはここから見えない位置にある誘いに来てくれてありがとう 共用の洗濯機使い終わるまで音の聞こえるところに座る 工程が次第に進んでいく感じここから先はしばらく強火 玄関で用事は終わる 遠雷は遠いので触れることができない 月光が遮られる時のスピード指の形だけは鮮やかで 知り合いの家に荷物を届けたら見えるところに置かれた薬 すれ違うように降り出す雨ばかりあるので駅は人で混み合う 武田ひか 現象という現象が迫りくる泥酔はそこまで来ています 遠さへと眼の焦点が合ってゆく釦をはめるようだと思う ブラジルに無口な人はおるんかな クラブで踊る男女の光 アンコールひらひらとあり喝采が花になったら現れるだろう 火刑すらねじ伏せる眼だ掴み取るようにあなたも空を見上げて 貌のない獣が唸る森の中 言葉を連ね続けなければ 硝子瓶叩き割る手を叩き割る手を見つめればかがやきのさなか
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武田ひか 長崎県出身。 岡山大学短歌会所属。 津中堪太朗 二〇〇一年生まれ。 岡山大学短歌会所属。